見生山大念寺

けんしょうさん(けんせいざん)だいねんじ

阿弥陀三尊でだけでなく両脇に善導大師像・法然上人像が揃う数少ない浄土宗寺院

大槌町役場に隣接して建つ浄土宗の寺院です。本尊は「阿弥陀如来(あみだにょらい)」。かつては三陸観音霊場29番札所であった時代もありました。
福島県いわき市平(磐城国山崎村)にある専称寺の末寺で、二十六世良盛和尚の弟子である受覚和尚が開山しました。
1798年、第十二世良義の時に、火事により焼失した本堂、庫裡(くり)、山門等が再建されました。
その際に、門弟たちの奉納した法然の木像が収蔵されました。
ご本尊は他の場所から来た仏様ですが、鎌倉仏でよどみがなく美しい形をしています。
両脇侍の「観音菩薩」と「勢至菩薩(せいしぼさつ)」は小像ながら台座の装飾など見事で大きく見えます。
圧巻なのは中国と日本で浄土教を広めた「善導大師」と「法然上人」の像です。
桂の木を丁寧に彫り上げ、彩色は細部まできめ細かく、裳裾(背面下部)に「寂照軒」という塾の師の33回忌を期して制作されたものと記され、江戸人形町の仏師・安岡良運が制作しました。
また、江戸で一世風靡した書家「三井親和」の幟(のぼり)や扁額(へんがく)も残っています。
他にも町指定の「十一面観音」「地獄絵」「むかさり絵馬」など文化財満載です。

十一面観音(じゅういちめんかんのん)[町指定文化財]

山門をくぐると左側に観音堂があり、その中に祀られています。その昔、無量山観音として城内(じょうない)の山腹観音平※に鎮座していました。
小鎚神社にある観音神輿は、この無量山観音の神輿です。
明治の神仏分離令により、神輿は小鎚神社に移管されました。
 
※城内の山腹観音平・・・城内は現在の上町付近の地名をいい、公園やバス停にその名前が残っています。また、山腹観音平は、古廟橋前交差点の桜木町側の角地あたりにあったようです。

阿弥陀三尊(あみださんぞん)

中尊の「阿弥陀如来(あみだにょらい)」、
左脇侍の「観音菩薩(かんのんぼさつ)」、
右脇侍の「勢至菩薩(せいしぼさつ)」からなり、
「観無量寿経」を根拠とするものです。
観音菩薩は阿弥陀如来の「慈悲」を、勢至菩薩は「智慧」をあらわす化身とされています。

善導大師像(ぜんどうたいしぞう)

寛政6年(1794年)
仏師 江戸人形町 安岡良運 製作
■善導大師■
中国の隋から唐時代にかけての僧侶で、称名念仏を広めました。
『大唐西域記』で有名な玄奘三蔵(げんじょうさんぞう)とほぼ同時代で、浄土五祖の一人(第三祖)です。
浄土宗では、阿弥陀三尊と並ぶほどの大切な存在です。

法然上人像(ほうねんじょうにんぞう)

仏師 江戸人形町 安岡良運 製作
■法然上人■
日本で浄土宗を始めた親鸞の師です。関白九条兼実の求めに応じて『選択本願念仏集』を著作しました。
京都の知恩院や東京の増上寺などが浄土宗です。
「南無阿弥陀仏」とは「絶対阿弥陀様を信じます」ということで、阿弥陀如来が居る西方極楽浄土に往って生まれ変わるという思想です。
浄土宗では、阿弥陀三尊と並ぶほどの大切な存在です。

寂照軒位牌(じゃくしょうけんいはい)

寂照軒は奥州市にある「第三の本山」正法寺に三十世住職で、隠居後、大念寺に移住しました。
ここで塾を開講し、慈泉、祖睛、浄圓、五代善兵衛の富能(とみよし)が薫陶(くんとう)を受けました。
その師匠(寂照軒)の墓碑(卵塔風)と位牌を富能がつくりました。
この地方(ぢがた)文書には誤字脱字、書き損じもなく、教育力・教養力の高さを感じさせるものです。
 
※薫陶: 指導者の得をもって人を感化させ教育すること。

寺子屋(てらこや)

寛保年間(1740年代)から宝暦年間(1750年代)にかけて、名僧(寂照軒)による寺子屋が開かれたという歴史もあり、この辺りにおける寺子屋教育の先駆者といわれています。
菊池祖睛や菊池慈泉、五代善兵衛の富能もこの寺子屋で学んだといわれています。

御朱印(ごしゅいん)

300円
寺院に人が居るときのみ対応。
御朱印の授受を希望される方は、事前に連絡をしておくことをお勧めします。
巡礼者の皆さんを思い、かつて三陸観音霊場の第29番目の霊場だった名残を伝えようと、御朱印には「三陸札所 第二十九番」のスタンプが残っています。とても貴重な御朱印です。

催事「大槌まつり」(おおつちまつり)

【時期】
毎年9月第3月曜日を含む3連休に開催。
(2023年は9月15~17日で開催)
【内容】
大槌稲荷神社と小鎚神社の例大祭を合同で開催。
1日目 大槌稲荷神社宵宮祭
2日目 〃 祭典神輿渡御
   曳船まつり
   小鎚神社宵宮祭
3日目 〃 祭典神輿渡御
【大念寺におけるみどころ】
小鎚神社祭典神輿渡御では、大念寺まで神輿が渡御され、観音堂の前で郷土芸能が奉納されます。

※ポスターは令和5年のもの

★浄土宗の典型的な仏像配置が拝観できる貴重な寺院

浄土宗の典型的な仏像配置、阿弥陀三尊と善導大師像、法然上人像が揃う数少ない寺院。
また、善導・法然両仏像は、江戸の有名仏師安岡良運作。
参拝の折には、ぜひ拝観したいところ。
寺院に人が居れば拝観することができますが、こちらをお目当てに大槌を訪れる場合には、事前にお寺へ問い合わせされる事をおすすめします。

所在地 岩手県上閉伊郡大槌町上町1-8
アクセス 大槌町駅より徒歩7分
駐車場 数台可能
お問い合わせ 0193-42-2083 (住職: 大萱生 修明(おおがゆ しゅうめい))
例祭日
創建時代 1684年 ※増上寺の最古記録による(実際にはその以前に創建)
拝観時間等 9:00~17:00 ※寺院内拝観は寺院に人が居るときは可能
情報更新日 2023.11.16 ※掲載内容は、状況によって更新されます。