鹿子踊(5団体)

ししおどり

旧南部藩(釜石・遠野・川井)に伝承されてきた幕踊系のカンナガラ鹿子踊

鹿子踊は、吉里吉里・上亰・臼澤・徳並・金澤の5団体があります。
これらの町内の鹿子踊は全て幕踊系のカンナガラ鹿子踊です。

伝承・由来については各団体に諸説があり、定かではありません。ただ、金澤鹿子踊を除く、他の4団体は年代・経路をいにするものの、ほぼ共通の「房州踊り」の呼称をもつことから、その発祥においては同一的な起源が考えられています。

演目はどの団体も参拝踊りと庭踊りが基本で、囃子方の笛・太鼓に合わせて、踊り手の太夫鹿子を中心に女鹿子・幹鹿子・太刀振り等が踊ります。

臼澤鹿子踊(うすざわししおどり)
[町指定無形民俗文化財]
*伝承地区:臼澤地区

元禄年間に房州の船乗りが伝えた踊りでありましたが、天明年間に鹿島神宮へ赴いた大槌の村人が房州踊りに出会いその技芸を習い覚えたのが現在の鹿子踊と言われています。
大槌まつり小鎚神社祭礼に奉納、神輿渡御の先祓いとして参列し、お旅所奉納、個人宅の門打ちを行う他、地元臼澤の小鎚神社分社の祭礼に奉納します。
戸数少ない集落ですが全戸が保存会に加わり盛り上げ、他集落からの参加者も受け入れています。
演目は参拝踊りと庭踊りに大別、踊り形式は四十三様。

金澤鹿子踊(かねざわししおどり)
[町指定無形民俗文化財]
*伝承地:金澤地区(元村・対間地区)

江戸中頃(約30年前)に金沢の大家に宮古の茂市から嫁いだ人が茂市より鹿踊の師匠を招き、地元の若者衆に伝授したのが始まりとされています。明治後半から大正にかけて対間地区にも伝承し昭和45年に保存会が結成され現在に至ります。
金沢稲荷神社祭典での奉納舞(五穀豊穣・安全祈願)や新盆宅の供養の舞のほか大槌まつりにも参加。現在、集落の子供に伝習活動を行っています。町内他の四団体と踊りが異なります。
演目は「通り踊り」「雌鹿子狂い」など20種類。

上亰鹿子踊(かみよししおどり)
*伝承地:上亰地区

300年程前から伝わると言われ、房州生まれの人が釜石栗林(沢田)で若者衆に鹿子踊りを伝授したことから周辺に踊りが広まり、上亰地区にもこの踊りが伝えられたとされます。
踊りは別名「房州踊り」と云われ、元々地元に伝えられていた念仏踊りと融合し現在の踊りが形作られたと推測されます。
鹿子踊の特徴は必ず踊る前に褒め唄を歌ってから踊る事で、門・座敷。宿などを褒めます。
大槌稲荷神社・小鎚神社祭礼を初め、地元和野大明神・八幡神社の祭礼等で踊ります。

吉里吉里鹿子踊(きりきりししおどり)
*伝承地:吉里吉里地区

別名「房州踊り」とも称し、元禄年間に房州方面から吉里吉里へ伝えられたと口伝されています。
前川善兵衛が房州に立寄り香取神宮を参拝した際、そこに伝わる鹿子踊に感銘を受け人夫に習得させたという説や三陸沖で難破した房州漁船の船乗りが伝授したという説などがあります。
天照御祖神社の祭礼に神輿のお伴をして町内を練り歩き、渡御終了後、地域を門付けします。
最近では町外の各種行事にも積極的に参加しています。
演目「参拝踊り六種」「庭踊り三種」

徳並鹿子踊(とくなみししおどり)
[町指定無形民俗文化財]
*伝承地:徳並地区

江戸時代、海産物の交易が盛んに行われていた頃、房州から来航した船乗りたちが踊って見せたところから広まったという説や、江戸・天明の頃に村の又助という人物が諸国遍歴の途次、常陸の鹿島神宮に伝わる鹿踊りに興味を持ち、習い覚えて移入したものだという説もありますが文献・記録類はありません。
口伝によると町名では古い部類に属する鹿子踊と言われています。
地元の稲荷神社・方良神社の祭礼に奉納舞が踊られます。また、大槌まつりにも参加しています。

《郷土芸能マメ知識》
◆大槌の「鹿子踊」の原形は房州地方に残っているの・・・?(1)

小鎚の村人が諸国遍歴の祈り、房州や常陸地方に伝わる踊りに魅せられ技芸を習得して伝えた。とか、房州生まれの人物が栗林沢田地区に伝え広まったとされる踊りはどのような民俗芸能だったのか?
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大槌の鹿踊は、江戸時代に伝播したと言い伝えられていますが、その習い覚えたとされる場所(千葉県・茨城県)には現在、大槌で踊られている芸態は伝承されていません。
(続く)
※伝承元の一つと言われる鹿島神宮には「神鹿」と呼ばれる鹿が飼われている。

《郷土芸能マメ知識》
◆大槌の「鹿子踊」の原形は房州地方に残っているの・・・?(2)

ならば、芸能に携わる人々が、元の芸能に創意工夫を凝らして創造してきたのかも知れません。
鹿の踊りは、福島県・山形県・宮城県・岩手県に分布している地域性のある芸能です。
一方、関東・中部・東北の広範囲に分布しているのが「三匹獅子」という獅子舞で、演目の歌詞は東北にある鹿踊とほぼ同じです。
東北の鹿踊全般に先祖供養の色彩が強いのは伝播の過程でそれぞれの地域性が加味され、念仏系の芸能の影響を受けて変化したのではないかとも考えられています。

★ 三陸 大槌町 郷土芸能 かがり火の舞 ★(令和5年も開催!)

年に一度、町中が熱気に包まれ盛り上がる大槌まつり。
その前夜祭として神社で舞を奉納する「宵宮(よいみや)」の雰囲気を、大槌町を訪れた観光客の皆さんに楽しんでいただく企画、三陸大槌町「郷土芸能かがり火の舞」。を令和5年も開催しします。
(下記「かがり火の舞」情報参照)
 
かがり火に照らされ、幻想的な雰囲気の中で勇壮に舞い踊る郷土芸能演舞を、荘厳な夜の小鎚神社でお楽しみいただけます。
町民の皆さんも観賞できますので、ぜひお越しください。

お問い合わせ 0913-42-5121 大槌町観光交流協会
引用文献 2015年1月31日発行「大槌の郷土芸能」(大槌町文化遺産活性化実行委員会)
写真協力 大槌町ほか
情報更新日 2023.5.10 ※掲載内容は、状況によって更新されます。
「かがり火の舞」情報 https://otsuchi-ta.com/event-info/?p=6207