大槌の気候風土で育てる
岩手大槌サーモン
養殖に最適な好条件で育てる漁業
岩手大槌サーモンを育む豊富な水資源
岩手大槌サーモンは、ふ化して間もない5~7g(5cm程)の仔魚を大槌町内陸部の桃畑地区にある桃畑養魚場で200g〜400g(20cm程)になるまで育てた後、船越湾の吉里吉里沖の海面に移して2kg以上に育成し出荷しています。河川で行われる内水面漁業と海で行う海面漁業の両方を大槌で行う事で、稚魚の状態から出荷までが一貫して大槌育ちなのが特徴です。
また、水資源に恵まれた大槌には、大槌川上流の桃畑養魚場に注がれる北上山地のミネラルを蓄えた清流、陸上や海底からのミネラル豊富な湧水、三陸の冷たい海と岩手大槌サーモンの養殖に適した水環境が揃っています。
森のミネラルを運ぶ清流
大槌町内には大槌川と小鎚川の2つの河川が流れています。大槌川の河口から10kmほど離れた桃畑養魚場には豊富な水量を誇る北上山系の清流が流れ、稚魚や桃畑学園サーモンの生育に大きな影響を及ぼしています。
貴重な生物も棲む良質な湧水
大槌は湧水が豊富なことで知られています。
源水地区の湧水は湧出量が多く、古くから鮭・鱒のふ化場に活用されてきました。絶滅危惧種の水草や天然記念物の魚など貴重な生物が育つ良質な水が湧き出ています。
おいしい!を育む冷涼な水
三陸沿岸の親潮と呼ばれる寒流は、冷たい水を好む岩手大槌サーモンの生育にとって最適な環境です。また、海底にもミネラル豊富な湧水が確認されており、養殖に好適な水資源の豊かさを象徴しています。
大槌を代表するブランドサーモンへ
岩手大槌サーモンを
質・量ともに日本一のブランドに育てる
2019年度から二期の試験養殖として始められた養殖事業は初年度の2020年には5.5トン(24,000尾)の生産を成功させました。その後も順調に生産量を増やし、三期目からは規模拡大を目指し事業化。2028年度には養殖生簀を20基に拡大し2,000トンの生産を目標にしています。
今やニーズの高まりから日本の各地でご当地サーモンが生産されていますが、その中でも岩手大槌サーモンは脂のりと風味の良さから市場からも高評価を得ています。
独自性を持たせた内水面漁業
桃畑学園サーモン
桃畑学園サーモンの生産事業販売事業は2020年11月に海用種苗の残りを試験的に飼育したことから始まりました。16ヶ月間の淡水飼育期間を経て2.0㎏程までの育成に成功し、2021年6月に初出荷しました。2022年4月には「桃畑学園サーモン」を商標登録し、岩手大槌サーモンの兄弟ブランドとして好評を博しています。生産施設と生産体制の基盤を強化し今後も生産量を増やしていく予定です。
| 2021年度 | 3.5t | (1,750尾) |
|---|---|---|
| 2022年度 | 4.0t | (2,000尾) |
| 2023年度 | 10.0t | (5,000尾) |
大槌のさけ・ます増殖事業
江戸時代より続く、自然と共に育む事業
守り、育て、増やす。
先人の知恵を受け継ぐ鮭漁業
日本国内でも新潟の村上の鮭漁業の歴史は古く、平安時代に朝廷に献上された記録も残っています。江戸時代になると、鮭漁による運上金が村上藩の収益源となっており、寛延3年(1750年)には三面(みおもて)川への鮭の回帰特性に気づき、天然産卵を保護するなど人工ふ化放流事業の礎となりました。
岩手でも鮭漁業は古くから地域住民の主要な食糧、産物として盛んに営まれ、江戸時代には南部藩の重要な財源として扱われて来ました。1700年代には既に資源保護や増殖についての知識があったようで宮古の津軽石川をはじめとする周辺の河川で禁漁期間を設けたり、河川内で孵化した稚魚を小川の堰に導き保護していた事が明らかになっています。明治時代に乱獲が進み資源の減少が見られると稚魚の採捕禁止や、海・川漁での夜間操業を禁止するなど様々な規制を行い資源保護にも取り組んでいました。
人工ふ化放流事業の始まりと不漁への転換
世界的に見ると、鱒類の人工ふ化増殖は1420年頃のフランスで試みられており、日本では明治11年(1878年)に世界で最初の鮭の人工孵化場が設置され、本州各県、北海道へと広がっていきました。
大槌では明治42年(1909年)に御社地(現・大町)に大槌町さけますふ化場が竣工され、大槌川、小鎚川における鮭の人工ふ化放流事業が始まりました。技術の向上もあり、1970年代半ば以降、鮭の漁獲量は年々増えていき、1990年代の大槌では1日に約5トン(15,000尾)もの漁獲を誇りました。
ところが、2000年代後半以降は減少傾向に転じ、東日本大震災以降には激減の一途を辿っています。全盛期の1996年に1,730トン獲れていたのが、2022年には0.35トンと0.02%にまで落ち込みました。原因ははっきりと解っていませんが、三陸沿岸の海水温が高い状態が続いていることで日本近海まで鮭が辿り着いてない可能性や、春先に放流した稚魚が海水温が高い影響で十分に成長できない事などが挙げられています。
獲る漁業から育てる漁業への転換
漁獲の減少と震災からの復旧
大槌町の基幹産業の水産業の中でも大きな柱である鮭の漁獲量の減少は、鮭の販売益の減少はもちろん、水産加工や流通などの他業種にも大きな影響を及ぼしています。追い打ちをかけるように東日本大震災によって大槌川ふ化場の第1、第2、小鎚川ふ化場が全て被災してしまいます。
一部設備が復旧したものの、人工ふ化放流事業は自然環境の影響が大きく、不漁の原因が未だ明確ではない状況において、漁獲量は一朝一夕に回復が見込まれるものではありません。
このような状況を打開するべく、ギンザケ、トラウトサーモンの2魚種の海面養殖試験を開始し、「岩手大槌サーモン」として新たな育てる漁業が始まりました。
これからも大槌の自然と共に
鮭の人工ふ化放流事業も岩手大槌サーモンの養殖事業も、その多くは人の手の及ばない自然環境に委ねられた育成事業であり、大槌の豊かな自然が支える産業であることに変わりはありません。水揚量全般の減少や魚種交代など水産の現場を取り巻く状況は日々変化しますが、この豊かな自然と共に私たちが歩む姿勢はこれからも変わりません。
わたしたちが岩手大槌サーモンを支えています
新おおつち漁業協同組合
- 海面養殖試験の実施
大槌復光社協同組合
- 淡水養殖(種苗生産)試験の実施
- 岩手大槌サーモン稚魚生産供給
- 桃畑学園サーモン生産出荷
[一財]漁港漁場漁村総合研究所
- 各連携機関の調整、指導
株式会社ニッスイ
- 養殖、販売などに関する技術・情報提供
弓ヶ浜水産株式会社
- 養殖、加工に関する技術提供、試験参加
- 岩手大槌サーモン生産出荷
岩手大槌サーモン推進協議会
- 岩手大槌サーモンの産地化、消費拡大、町内一貫生産の実現
- 関係機関による情報共有、実施方法の合意形成など